■品確法と住宅性能表示制度のポイント
品確法の重要な3ポイント
基本的には消費者保護の観点を含めて作られた法律で、戸建てでもマンションでも適用されます。
1.住宅の基本構造部分について最低10年間の保証を業者に義務づけ
全ての新築住宅を対象。専門用語では住宅業者の10年間の「瑕疵担保責任」という。
2.住宅性能表示制度の新設
設計時の「設計住宅性能評価」と建設完了時の「建設住宅性能評価」がある。
設計住宅性能評価のみ選択も可能。費用は設計・建設を合わせて1件10〜20万円程度。
3.新築住宅に関する紛争処理体制の新設
紛争発生時に住宅紛争処理機関にあっせんや調停、仲裁を頼み、弁護士などが法的処理の対応をしてくれる。費用は1件1万円と安価。
ただし、住宅性能表示制度の「建設住宅性能評価」を受けた住宅のみ。
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■住宅性能表示制度の概要
建設業や不動産業と関係のない第三者機関である指定住宅性能評価機関(略称:評価機関)が、国土交通省の基準に従って新築住宅の性能を評価する仕組みです。
評価を受けるかどうかは、住宅取得者(マンションの場合は販売者)の判断に委ねられる任意制で、1件あたりの費用は10〜20万円程度です(費用は、面積などの要件によっても異なり、さらに評価作業を行う評価機関ごとに異なる料金設定がされています。各評価機関のホームページを参照)。
評価項目は、大きくは以下の9項目です。それぞれが、さらに細項目に分かれています。
1.建物の強さ 2.火災時の安全性 3.劣化対策
4.維持管理(水道、ガス管など)への配慮 5.省エネルギー
6.空気環境 7.採光 8.防音性 9.高齢者への配慮
例として「1.建物の強さ」のうち耐震性の基準についてみると、最も低い評価の「ランク1」は数百年に1回程度発生する大地震がおきても建物が倒れない。「ランク2」ではその1.25倍の地震、「ランク3」では1.5倍の地震にも耐えられるというものです。
項目によってランクの数や評価の仕方は異なります。(詳細は住宅性能表示制度と品確法の概要を参照)
また、「6.空気環境」のシックハウス対策などは選択項目になっており、追加費用が必要です。
評価には、設計段階での評価(設計住宅性能評価)と完成段階での評価(建設住宅性能評価)があり、申請費用費用は合わせて15〜20万円程度です。
設計住宅性能評価だけでもよく、この場合の費用は半額程度になります。
ただし欠陥住宅の多くは設計には問題がなく、施工段階での手抜きが大きな原因ですので、欠陥住宅を予防するという意味から、両方を選択した方がよいでしょう。評価費用は、建設費に比べると1%に満たない割合ですから、保険と考えても損はないはずです。
また、住宅の欠陥が見つかった場合には、住宅紛争処理機関(財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センター)に申し立てると、弁護士などが調停や仲裁を行ってくれます。つまり、裁判手続などを行う必要がなく、手数料も1万円と非常に安価です。
ただし、建設住宅性能評価を受けていることが条件です。その点でも、設計住宅性能評価のみではなく、建設住宅性能評価を受けている住宅の取得をお奨めします。
■品確法施行以前の住宅建設の問題点
品確法のメリットを明確にするために、同法施行以前の状況を整理しておきます。
建築基準法は、品確法が出来るまで住宅性能に関わる唯一の法制度でした。いわば住宅の最低必要な基準と、それが達成されたかどうかを検査する方法を示したものです。
この法律に従って、業者は設計完了時に役所に建築確認を申請し、建設完了時に完了検査済み書を受けます。これは建築基準法に則って設計・建設され、設計内容と同一の用途と外観と規模(大きさ)が建設実現されたことを、役所が確認したことを示すものです。
この制度が完全に機能していれば、問題となるような欠陥住宅の多くは発生していないはずでした。
品確法施行以前の問題点
現在でも品確法の住宅性能表示制度を利用しないと、ほぼ同じ問題が生じます。
1.設計どおりに建設が適正にされたか分からない(欠陥住宅問題)
本来は、建築確認の完了検査時に建築主事(市町村建築確認担当課の職員)や確認申請を業務とする民間の担当者が確認すべき事柄です。
しかし建設業者側からみれば、施工の段階で検査員をごまかす手だてはいくらでもあるようです。だから欠陥住宅(違法建築)があとを絶たないのでしょう。まして素人には、手抜き工事を見つけることは不可能です。
2.住宅の最低水準はクリアしていても、その建物の性能は分からない
建築基準法は住宅の最低基準を示したものです。反対にいえば、建築基準法の水準以上の設計・施工であっても判断できません。例えば、「地震に強い」を売り言葉にしていても、どの程度「地震に強い」のかは不明です。
3.欠陥住宅と判明しても損害賠償の裁判が負担になる
住宅取得者は、住宅ローンを目一杯使用したりなど、一般的に資金の余裕がありません。
そのため裁判費用や、欠陥住宅であることを証明するために専門家にみてもらう費用を捻出したり、仕事を休んで裁判所に何回も通ったりなどが、現実的に不可能な場合が多い。
したがって、手抜き工事のせいと分かりながら、泣く泣く住み続けている人もいます。
4.欠陥住宅でも建設会社が倒産した場合は泣き寝入りするしかない
建設会社が、建設不況のなかで資金繰りに困って手抜き工事をしたあげく倒産というのが最悪のケースです。住宅取得者側からみれば計画倒産のように思えるでしょうが、これだけ不況が続けば、建設会社に悪意がなくても増加が考えられるケースです。
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品確法の導入によるメリット
品確法および住宅性能表示制度の導入により、前述した問題点の多くは改善されました。住宅取得者にとってもメリットは大きいのです。
ただし、住宅性能表示制度は住宅取得者の意向による任意選択制ですから、住宅性能表示制度を選択しないと、そのメリットを享受できないことになります。
住宅取得者側からみたメリット
品確法施行以前の
問題点
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品確法による改善点
(新築住宅に対して)
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住宅性能表示制度を選択
した場合のメリット
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1.設計どおりに建設が適正にされたか分からない
(欠陥住宅問題) |
全ての新築住宅を対象に、住宅の基本構造部分について最低10年間の保証を業者に義務づけた。 |
建築基準法の検査に加えて、指定住宅性能評価機関の評価員が各種検査を行うので、より欠陥住宅の発生が防げる。 |
2.住宅設備の最低水準はクリアしていても、その建物の程度は分からない |
住宅性能表示制度を選択すれば対応(右欄参照) |
第3者機関である指定住宅性能評価機関が検査後に交付する住宅性能評価書によって明確になる。 |
3.建築基準法に規定のない空気環境、音環境などの状態が分からない |
住宅性能表示制度を選択すれば対応(右欄参照) |
同上。
なお、ホルムアルデヒドなど一部は選択項目で、別途費用が必要。 |
4.欠陥住宅と判明しても損害賠償の裁判の負担が大きい |
住宅性能表示制度を選択すれば対応(右欄参照) |
設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書の両方があれば、住宅紛争処理機関が調停や仲裁を行う。 |
5.欠陥住宅でも建設会社が倒産した場合は泣き寝入りするしかない |
住宅性能表示制度を選択すると間接的に対応できる
(右欄参照) |
指定住宅性能評価機関の評価員が各種検査を行うので、現実的には欠陥のある住宅はできないはず。 |
上記表の記載事項のほかにも次のようなメリットがあり、それぞれ重要な意味を持っています。
良心的な建設業者など住宅供給者側からみたメリット
自身のもつ技術や住宅建設にかける真摯な姿勢が、客観的な基準で評価される。
欠陥住宅を建てるような不良業者との差別化が図れる。
政府や住宅業界からみたメリット
欠陥住宅などのマイナスイメージを払拭し、人々が安心して住宅を取得できる枠組みができた。良好な住宅建設の促進策、また間接的には景気浮揚策となるはずでした。
住宅性能評価という新産業分野の創出ができた。今後、建設業界からは大量の失業者が見込まれているが、一級建築士などの技術者の受け皿として有力になるはずでした。
■住宅性能表示制度が一部の住宅業者にうとまれる理由
住宅取得者にとって、いいことづくめの制度であることは理解していただけると思いますが、一部の住宅業者にとっては大いに迷惑な制度なのです。その理由としては、次の点があげられます。
1.自社の住宅建設技術のレベルが明らかになってしまう
つまり技術に自信のない会社ほど、本制度は迷惑なものなのです。
2.いわゆる「手抜き工事」ができなくなってしまう
「この制度を使うとコストアップになるので、建設費を増額したい」と住宅購入者にいう住宅業者も出てくると思います。
こうした業者は、従来のやりかたが「手抜き工事」であったり、コストダウンのために「手抜き」に近い低レベルな工事をしてきたと考えて良いわけです。こうした不良業者を見極め排除できることも、本制度の重要なメリットです。
3.検査のために建設スケジュールが延びてしまう
この点は、本制度の数少ない欠点のひとつといえます。建築確認の検査や住宅金融公庫の審査に加えて、本制度の検査が加わることになるからです。
本制度の適用を最初から考えていない住宅の方が結果的に建設工期が短くてすみ、本制度を利用する質の高い住宅の方が検査待ちのため建設工期が伸びて不利を被ります。「良質な住宅供給の促進」を旗印にかかげている国土交通省が、政策矛盾に陥っていますので一刻も早い是正措置を望みたいと思います。
(以上の点については、住宅性能表示制度の運用の改善の提案を今後していく予定です。)
最後の3を除いた他の理由で、住宅取得者に対して住宅建設業者が住宅性能表示制度を使用しないように奨めたり、誘導しようとしていると感じられた場合は、その業者は不良業者である可能性が高いといえます。
結果的に住宅性能表示制度を選択しない場合でも、住宅性能評価について誠意のある説明や対応をする業者を選ぶことは、不良業者にあたらないようにするために大事なことです。
■決して高くない評価料
本制度の普及を妨げている最大の要因は、評価費用の全額を住宅取得者が負担することです。
日本ERIが行ったアンケート調査では、住宅性能評価の経費約15万円を高いという住宅取得者が3/4もいるということです。住宅取得者は少ない自己資金と長期の住宅ローンで、ぎりぎりの生活を強いられていて、少しでも経費は節約したいという表れでしょう。
多くの人にとって、住宅購入は人生最大の買い物であり、投資ともいえます。
その投資には欠陥住宅というリスクがありあります。その発生率は非常に低いのですが、たまたま欠陥住宅をつかんでしまうと被害額も人生最大級です。住宅ローンの返済が30年も残る中で、紛争の手間や修復費用などを捻出し、また危険と知りつつも欠陥住宅に住まわなければならない。その方の人生はぼろぼろになってしまう。
不況が続くなか、依頼した建設業者が手抜き工事をして倒産することも大いに考えられる。住宅性能表示制度は、性能表示という住宅の付加価値を確認するというメリットよりも、間接的に欠陥住宅を予防するというメリットの方が、住宅取得者にとっては重要ではないでしょうか。
そうした保険として住宅性能表示制度を位置づけられ、その費用は建設費の1%程度にすぎない。人生最大の買い物について、保険をかけておく。決して住宅評価費用は高くないはずです。
■高品質な建物の設計・建設は当たり前
長期優良住宅モデル事業に示すように「いいものをつくってきちんと手入れして長く大切に使う」というストック社会のあり方について、具体の内容をモデルの形で広く国民に提示し、技術の進展に資するとともに普及啓発を図ることを目的としています。
この観点から、住宅の長寿命化に向けた先導的な事業の提案は、住宅性能を明確化し消費者へ安心・安全で長期に利用できる住まいを、これからのスタンダードとしています。 差別化された住まい(標準化の方向)提供をすることができる、これからの時代に不可欠な戦略的マネージメント活用する企業として標準設計提案します。
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